ルワンダのドローンサービスがすごい話
イッテQのワールドツアーでイモトがルワンダを紹介していたのですが、そこで出てきたルワンダのドローンサービスがすごかったので備忘録も兼ねて書きます。
シリコンバレー発のziplineという会社です。
ドローンを使って、 山奥にある病院に輸血用の血液や薬品などを迅速に空輸するサービスを提供しています。自動操縦で目的地に向かい、到着したら荷物をパラシュートで落としてそのまま帰還するというもの。
航空宇宙工学を多少なりとも勉強した身としては、このドローンが非常によくできていて感動しました。設計ですげーと思ったことをいくつか。↓
1. 固定翼ドローン
最近よく聞くドローン空輸で使われるドローンって回転翼式じゃないですか。小さい翼をモーターとかでブンブン回すことで、揚力*1を得るドローンです。VTOL(垂直離着陸機)とも呼ばれたりします。
けどこのドローンは、固定翼です。回転翼(=プロペラ)もついてはいますがこれは揚力ではなく推力*2を生み出すためのものです。その代わり、揚力は固定翼で生み出しています。
固定翼の何が良いかって、回転翼に必要なパワーが少なくて済むんですよね。翼の形とか知らないとわかりませんが、多分回転翼ドローンの10~30%程度で済むと思います。
あと、回転翼ドローンよりも速く移動することができます。サービスの性質上、スピードは大切なんでしょうね。
2. V字尾翼
普通の飛行機は水平尾翼と垂直尾翼が付いていますが、このドローンはV字尾翼という特殊な尾翼を採用しています。
このV字尾翼を採用している理由ですが、尾翼の枚数が減るのでその分だけ空気抵抗を減らすことができるのが狙いなのではないかと思います(たぶん)。
上でも述べたように、抗力を減らすことで、必要な推力が少なくて済むのでバッテリーも小型化できたり、あるいは必要な翼面積が減るので主翼を軽くできたりするので、機体を軽くできます。
3. 着陸方法が独特
固定翼の大きなデメリットですが、離着陸がとても面倒です。滑走路が必要ですし、離着陸は技術的にもとても難しいです。あと脚を付けなきゃならないのも難点ですね。
しかしこのドローンは、お尻に付いたフックを地上に固定されたワイヤーに引っ掛けて、強制的に停止するという独特な着陸方法を使っています(もはや着陸ですらない)。
一見バカみたいに見えますが、確かに滑走路もいらなければ脚も搭載しなくて良い。その分いろいろと設計を簡略化できるので、変なミスをする心配も減る。すばらしい。
ただフックをワイヤーに引っかけるという行為自体はかなりの精度を要求されるでしょうし、制御技術やワイヤーへのアプローチの仕方、フック周りの形状の工夫など色々と考えることは多そうですが、これを見事に実現してるziplineすごい。。。
4. 自動操縦
固定翼機は、回転翼機より制御が難しいです(たぶん)。
角度の制御が甘いと、翼の気流が乱れて失速してしまったりします。あと、荷物を落とした瞬間に機体の重量が変わるのでその辺りの制御もかなり難しそう。下手な設計にすると落とした瞬間に失速して墜落とかあり得そうです。
特徴的だなと思ったのはだいたい上記の4点くらいでした。何がなんでも機体を軽くして十分な量のペイロード(=血液や薬品)を載せ、また燃費をよくすることでサービスの提供地域を広げようという強い意志を感じる設計ですね。実際この機体は半径55km圏内なら荷物を届けて帰ってこれるらしい*3。面積にすると、 程度です。
ちなみに群馬県の面積がなので、群馬県くらいならカバーできるくらいの行動半径ですね。
設計もすごいですが、そもそもこのサービスの運用地域として最初に選んだのがルワンダってのも、番組を見ていてなるほどなあという感じでした。
- 山がちな地域で、車での移動は時間がかかる
- 医療制度・設備が未熟
みたいな場所らしく、かなり需要があるっぽいです。
ただ、固定翼だと荷物の投下地点の精度は、ホバリングで落下地点を定められる回転翼機に劣ってしまいます。そのため、密集した都会部での運用には向いていない設計だと思われます。田舎向けですね。日本でも群馬県とかなら運用できるかもしれません。
別にドローンのデリバリーサービスの動向とかを詳しく知っているわけじゃないですが、テレビを見ていてすげーとなったのでまとめてみました。おしまい。
*1:上に浮く力のこと
*2:前に進む力のこと
*3:https://pdfs.semanticscholar.org/5d42/ccdc6b5afd0ff8407a389789e1055de84fef.pdf